ドイツに住んでいる日本人が遭遇するトラブルで本当に多いのが、賃貸住宅のトラブルです。
基本的なルールは日本と似ている部分もあるものの、ドイツの住宅事情はやはり勝手が違うので戸惑う方も多いと思います。例えば、壁に穴開けがOKなことや、退去時に壁塗りなどの改装をしなければいけないのもそうですね。
さらには、賃貸契約で気をつけるべきこと、家賃の値上げや水漏れ・カビの発生時の修理の時の対処法、住人の権利と義務などについては、さっぱり知らない方も多いのではないでしょうか。
それでも、何かあったら対処しなければいけないのが、住宅関係のトラブルです。しかし、煩わしいトラブル対処に関わりたくない方も多いでしょうし、そもそもドイツに来たばかりの日本人には全く手に負えない事も多いですね。
そんなとき、助けになってくれるのが、Mietervereinです!様々な日本語訳がありますが、「借家人協会」という訳が意味としては正しいと思うので、このサイトでは以降この名前を使っていきます。
ドイツに住んでいる日本人にこそ、万が一のために入会していてほしい協会でもあります。
Mieterverein(借家人協会)とは
では、Mietervereinとは何でしょう?
簡単に一言で言うと、Mieterverein(借家人協会)は、賃貸住宅を借りている人達のためにある協会です。賃貸住宅に住んでいる人たちの、法律上の疑問に答えたり、トラブル時の対処にあたってくれる組織なのですよ!
ですから、持ち家に住んでいる人が入会しても意味はありません。当たり前ですね(笑)
しかし、賃貸住宅の借主であれば、お店や事務所として使っている事業主も入会できます。他にも、アトリエスペースを借りている芸術家や、借地の場合でも大丈夫です。
それでは、具体的にMietervereinがどんな事をしてくれるのか、見ていきましょう!
Mietervereinがしてくれること
Mietervereinに入会すると、以下のようなサービスを受けることができるようになります。手数料は無料のものもありますし、有料のものあります。金額は協会によって異なります。
中には、会員以外にも有料でサービスを提供している借家人協会もあるようです。
いずれにしても、弁護士を頼むよりは安いので、トラブル時や相談でMietervereinを利用するのはお勧めです。
ただし、問題が起こってから入会した場合、一部のサービスが受けられない場合もあるので、それぞれのMietervereinで予め確認することが必要です。
法律上の相談窓口
賃貸住宅にまつわる、法律上の相談に乗ってくれます。ほとんどの協会が、直接窓口に行くほか、電話やメールなどでも相談を受け付けているはずです。
協会で働いている専門の弁護士が、実際にアドバイスをしてくれます。
実際にトラブルがある時はもちろん、家賃の値上げが適正かチェックしたり、その他の疑問がある時にも相談に乗ってくれます。
トラブル時の交渉代行
相談窓口に行った後、必要に応じて、トラブル時の交渉を代行してくれます。このサービスをお願いするには、委任状(Vollmacht)を書くことになります。
相談できるトラブルは、立ち退き要求された場合・暖房の故障・断熱上の不具合(窓など)・水漏れ・騒音・カビの発生・共有スペースの不十分な清掃などなど、住環境を悪くするあらゆる問題です。
家主側に手紙を書いて、トラブルの解消を要求したり、住環境の悪化による家賃の値下げ交渉などをします。
私たち外国人にとって、手間のかかる面倒な交渉を代行をしてもらえるのは、本当に助かりますね!
以下は、水漏れについて書いた過去記事です。難しいケースの対処法は、主に2番目の記事に書いてあります。自分でやるのも手ですが、早い段階でMietervereinにお願いすると、何かと心強いでしょう。
賃貸契約書のチェック
住居の賃貸契約を交わす前に、契約書の内容をチェックしてもらえます。
ドイツに来たばかりの方には、契約書はチンプンカンプンですね。でも住居は真っ先に確保しなければいけないものでもあります。
契約書の内容が分からないのは、ドイツ語能力だけの問題ではないのですよ!
冷静に考えれば当前でしょうが、ドイツで『普通の契約書』がどういう内容か知らない以上、内容を理解して、適切か判断するのは不可能なのです。
契約書は、それほど特殊な専門用語があるわけでなく、案外平易に書いてあります。ドイツでのルールを知って、ドイツ語能力が上がってきたら、いずれは理解できるようになります。
まあそれでも、ドイツ人でも契約書を弁護士さんにチェックしてもらう人がいるぐらいなので、ドイツの法律に詳しい方でもなければ、契約時はやはり助けを借りた方が良いのではないでしょうか。
アパートの入居時・退去時の立会い
入居時、退去時に立会いをしてもらえます。
後にトラブルに発展した場合に証言をしてもらえるので、家族ではない第3者に立ち会ってもらうのは重要です。
友人などでも良いのですが、借家人協会のプロなら、何を確認しなければいけないか把握しているので、なおのこと安心ですね。
下は、引越しにまつわるチェックリストを書いた過去記事です。住居の引き渡しで必要な記録(Übergabeprotokoll)についても触れています。
アパートの現状確認
専門家をアパートに派遣して、コンディションを確認してもらえるサービスです(Gutachten)。相談窓口で話をした時に、担当の弁護士さんが専門家の確認が必要だと判断すれば、専門家を手配してくれるでしょう。
例えば、改装や修理が正しく行われたか、不安な時がありますね。そういう時に、専門家が実際にチェックして、判断をしてくれます。
不具合がある場合には、その所見がその後の交渉に使われます。
専門家がチェックしてくれるのは、ざっと以下のようなケースです。
- 部屋の広さの測量 - 例えば、契約書に書かれているより10%狭かったら、家賃を値下げすることが可能です
- 改装の状態 - 改装されたのに状態が良くない場合
- 暖房・温水・断熱の状態 - 温水が出ない、暖房の故障、暖房を入れても寒い場合など
- カビの状態
- 騒音の測定
- 電磁波の測定と解析 - 建物の上に送電線があったり、屋根の上に携帯用の送電アンテナがある場合などですね
- 有害物質の検出と解析 - 有害廃棄物がある場合など
ご近所トラブルの仲裁
騒音やゴミ問題など、ご近所とのトラブルの仲裁にもあたってくれます。ご近所とは直接話をして解決できれば一番なのでしょうが、頼むしかないケースもあるでしょうね。
借家人を代表したロビー活動
直接サービスとして見えてくるものではないですが、Mietervereinは借主の権利を守るための、ロビー活動もしています。
各借家人協会が発行している冊子で、活動の報告がされています。
近くのMietervereinを見つける
住んでいる地域のMietervereinは、下のページで見つけることができます。このサイトは、Mieterbundという、全国のMietervereinをまとめる上部組織です。
ただし、このMieterbundに加入していない借家人協会もあります。
例えば、ベルリンでは、Berliner Mieterverein、Mietervereinigung Berlin、Berliner Mietergemeinschaft、Mieterschutzbund Berlinなどがあります。
それぞれ特徴があり、料金や規模、サービスが異なるので、必要に応じて自分に合った借家人協会を選ぶと良いでしょう。
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