前回、『部屋の壁の塗り方-準備編』で壁の表面を平らにし、表面の汚れを取り除き、塗料がついてはいけない場所の養生をしました。ここまでの作業の方がこれからやる塗装より大変だったかもしれません。
それほど長くないドイツでの滞在で、塗装用のスプレーを買う人は滅多にいないと思うので、ここではローラー塗装のやり方を書いていきます。
必要があれば下地処理
さあ、いよいよ塗装!と行きたいところですが、ちょっとその前に確認しておくことがあります。
壁紙を新しく貼ったとき、モルタル仕上げをしたばかりでまだ1度も塗装がされていないときは、下地処理が必要です。普通は入居するときに壁は塗られているので、下地処理がいらないケースがほとんどでしょう。前回の準備編でMoltofillなどで小さな面積を補修した場合も不要です。
下地処理剤はプライマー(Grundierung, Tiefengrund)と呼ばれ、上塗り塗料と壁をより密着させるために使います。石膏ボードやモルタルなどはとくに水分を吸い取ってしまうので、下塗りなしでは仕上がりが綺麗にはなりません。
また、水漏れや錆が浮き出てきた跡などがある場合は、その場所にFleckendeckerやIsolierfarbeと呼ばれる別の下塗り塗料を塗ります。
下地材を塗るのには下のような刷毛を使うのが一般的ですが、ローラーで塗ることができるタイプのものもあります。薄めて使うものもありますし、それぞれ使用法が違うので、先に必ず塗り方の説明を読みましょう。
用意するもの
では、本塗り塗装の準備をしていきます!以下のものを用意します。
塗料
塗料は安いものもありますが、仕上がりが全く違いますから質のよいものを買いましょう。初心者なら尚更、ケチってはいけません。塗料とローラーが仕上がりを大きく左右します。
Alpinaのこの塗料がスタンダードですし、おすすめです。Alpinaは多くの種類の塗料を出していて、デザインが似ていて紛らわしいのですが、この”Das Original“と書いてあるものを買いましょう。
好みに応じて、もちろん色がついているものを選んでもよいでしょう。
ペイントローラー・刷毛
ペイントローラー(Farbroller)は25cmぐらいの大きなものと、細かい場所を塗るために10cmぐらいの小さなものがあるとよいでしょう。角を塗るのに刷毛も1本用意しましょう。どれも洗って何回でも使用可能です。
このうち、大きなローラーは壁の大部分の凸凹模様を作るので大事。伝統的に好まれているのは、ワサワサと毛の長い羊毛ですが、高価ですし、あまり出回らなくなってきている様です。化繊のローラーでも、短毛のものよりも長毛の方がよい感じに仕上がると思います。よいローラーは一生モノとして長く使えますよ。
天井など高さのある場所を塗るための、テレスコープ式の延長用の棒がセットになっているものなど、いろいろあります。
刷毛はEckpinsel、Heizkörperpinsel、Maler-Pinsel、Winkelpinselなどと呼ばれる、柄が長くて傾きのあるものが便利です。
ローラーネット
余分なペンキをしごくための網です。塗料バケツの縁に引っかけられるようになっています。
塗料を混ぜるための棒など
塗料は使う前にしっかりと混ぜます。塗装屋さんは電動のマシンを使いますが、塗料を汚すものでなければ、木の棒でも何でも構いません。
脚立・ハシゴ
大きな面積の部分はローラーと前述の延長棒を使っても、角などは脚立を使って塗らないといけません。Altbauの家では天井がとても高いですし、ライトを取り付けるときなどにも使いますから、持っていると便利です。
照明
明るい部屋ならば太陽光で十分な場合もありますが、備えつけのライトは先に外しておくので、照明を用意しておきましょう。前回紹介した改装用のソケットの他、スタンドライトなど何でもよいのですが、塗料が飛ぶこともあるので汚れてもよいものを用意してください。
もし適当な照明がなければ、Baulampeと呼ばれるライトが明るく、かつ安価でおすすめです。
キッチンペーパーなど
塗料がこぼれたり飛んだりした時に、サッと拭けるようにキッチンペーパーなどがあるとよいです。こぼれてから紙を探すのでは大騒ぎですからね。
それから、ローラーや刷毛に塗料をつけた状態で少しの間使わない時には、ラップでくるんで乾かないようにする必要があります。そのためにラップを用意します。ビニール袋やアルミホイル、養生するときに使ったビニールシートの残りでもよいでしょう。
汚れてもよい服
塗装の際は、汚れてもよい服を着ましょう。とくに眼鏡をかけている人は、眼鏡を塗料から守るためにゴーグルがあるとよいです。
あと、忘れがちなのが足元。靴を履いていてもいなくても、使い捨てのシューズカバー(Schuhüberzieher)を使うとよいかもしれません。
いよいよ塗装!
塗装は上から下、細かいところから大きな面積の順番でします。
「上から下」に塗るのは、縫っている間に塗料が飛ぶこともありますし、下側を後に残す方が安心だからです。上方向にはあまり飛ばないですからね。ですから、天井を塗るときに壁全体を保護するのであれば、壁を先に塗ってももちろん大丈夫です。
先に細かいところを塗るのは、その順番の方が綺麗に仕上がるのが理由。逆の順番にした場合、刷毛の跡がハッキリ残ってしまいますが、ローラーで後から塗ると刷毛で塗った部分も上塗りできるため、全体がローラー塗りの模様になって目立たなくなります。
天井を塗る
まずは天井から始めますが、最初に天井と壁の間の角を塗ってから壁を塗ります。角は、刷毛を使って塗っていきます。塗料を使う前にしっかり混ぜることもお忘れずに。
主にAltbauの家では、角や天井の中央に石膏の立体的な飾り(Stuck)がついていることもあります(発泡スチロール製もありますが)。その場合も先に刷毛で塗ります。照明用のケーブル周りも同様です。
細かい場所を仕上げたら、ローラー塗りです!脚立に登って塗るか、テレスコープの延長棒を使いましょう。
塗料をローラーにたっぷりとつけてからネットでしごき、余分な塗料を落とします。最初は縦に、それから横向きに塗ります。ローラーに力を加えて押しつけるように塗るのがコツです(けっこう体力を使います)。
塗料が少なすぎるとムラに、多すぎると垂れてきますから、ちょうど良い量を探りながら塗ってくださいね。
壁を塗る
次は壁です。同様に、部屋の角や窓の周りなどの細かい場所を刷毛で塗ります。スイッチやコンセントの周り、暖房周り(暖房自体には別の塗料を使います)、床との境の幅木(Fußleiste)の上も先に刷毛で塗りましょう。
ローラー塗りは天井との境の上から始め、下に進んでいきます。天井の時と同様に、塗料を縦横に塗ります。ローラーをしっかりと壁に押しつけながら塗ってください。縦横に塗った後に、塗料をつけずにローラーを上から下に動かすことで、余分な塗料を取り除いて垂れるのを防ぐことができます。
これで塗り終わりです!塗り忘れがないか、チェックしましょう。
後片づけ
ローラーや刷毛の掃除
まず塗料に蓋をし、ローラーと刷毛を水洗いします。色が出なくなるまで綺麗に水洗いしてから、乾かします。綺麗に洗えば今後も何度でも使えます。
マスキングを剥がしていく
マスキングテープは、重ね塗りをするのでなければ、あまり間があかないうちに剥がす方がよいです。日を置いて塗料が完全に乾いてから剥がすと、塗料が一緒に剥がれてしまうこともあります。
まだ塗料が乾いていない状態なので、塗装面に触れないように気をつけながらゆっくりと剥がしていきます。これも上から下の順で剥がしていきましょう。また、大きなシートを剥がしているときは、シートがめくれないように換気で風を通し過ぎない方がよいでしょう。
換気をする
塗装した後は湿気がかなり出ています。しっかりと換気をしましょう。ただ、温度が低くなりすぎると塗料の乾きが悪くなるので、外が寒い季節は窓を開けっ放しにはせず、定期的に窓を開けて湿気を出しましょう。
およそ1日経ったら塗料が乾きます。必要に応じて重ね塗りをしてくださいね。
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