ドイツに来て誰もが悩むのが、健康保険(Krankenversicherung)をどうするかという事だと思います。短期の滞在なら旅行保険で良いのですが、長期滞在になるのであれば、ドイツの健康保険に加入しなければいけません。
しかし、外国人から見ると、この健康保険の仕組みがけっこう分かりにくいのです。しかも、保険の諸条件もどんどん変わっていきます。
ここでは、間違った保険を選んでしまわないために、保険の基本情報の他、選び方などを説明していきます。
基本情報
2009年1月1日から、ドイツに住む全ての人に健康保険への加入が義務付けられています(それ以前は、一定の条件の人に法定健康保険への加入が義務付けられていました)。保険が適用されるものでは、基本的に100%保険から支払われます。3割負担などというのはありません(治療内容により例外はあります)。
まず、ドイツの健康保険は、法定健康保険とプライベート健康保険に大きく分けられます。
法定健康保険(Gesetzliche Krankenversicherung)
法定健康保険は、法的に定められた健康保険、普通の会社員や学生の場合には、加入の義務があります。具体的には、一定収入以下の被雇用者、学生、失業者などです。
法定の保険は組合形式で、基本的に収入に応じた一律の保険料がかかります。つまり、保険料はどの健康保険組合(Krankenkasse)に入っても基本的に同じです。しかし、保険の適応範囲やサービスがそれぞれの組合で異なります。
法定の健康保険組合はとてもたくさんあります。大きく分けると、AOK、 BKK、IKKなどがあるのですが、これについてはあまり知る必要はないでしょう。
有名な組合では、AOK、Barmer、TK(Techniker Krankenkasse)などがあります。その他特筆すべきものに、KSK (Künstlersozialkasse)というものがあります。これはフリーランス(Freiberuflerードイツでは自営とはまた違う意味で使われる)のアーティストやジャーナリストが加入できる組合で、普通の自営業の人が支払う保険よりも安く済みます。
プライベート健康保険(Private Krankenversicherung)
法定健康保険に加入している人は、自営業になったり収入が増えた場合にも法定健康保険に入り続けられますが、法定健康保険への加入義務はなくなります。ですから、プライベート健康保険に変更が可能になります。
プライベート健康保険(Private Krankenversicherung)では、リスクに応じた様々な契約があります。ただし、2009年からPKV-Basistarifと呼ばれる、法定保険に準じたサービスと基本契約の基準が定められました。それでも、プライベート健康保険は契約毎に内容がかなり異なります。プライベート健康保険を扱っている会社には、Allianz、Gothaerなど、こちらもたくさんの会社があります。
一般的に、プライベート健康保険は保険の適用される範囲が広いと言われています(代替医療など)。ただし、プライベート健康保険の中でも特に安いものの場合、範囲が非常に狭いものもあります。契約の時に、しっかりと項目をチェックすることが大事です。それから、医者が受け取る報酬が多くなることから、予約も取りやすいなどのメリットがあります。
法定健康保険とプライベート健康保険の比較
このように、法定健康保険とプライベート健康保険に大きく分かれているので、まず最初に、どちらにするかを決める必要があります。
プラクティクムなどで基準の収入以下しか稼げなかったり、学生の場合は、法定健康保険に加入が義務付けられてます。でも、そうでない場合も、よく分からなかったら、まずは法定健康保険を選んでしまうというのが良いかもしれません。
というのも、一度プライベート健康保険に加入すると、再び法定健康保険には戻せないからです(例外はいくつかあります)。
プライベート健康保険にするのは、条件をよく理解してからでも遅くはありません。
もう少し具体的に、法定健康保険とプライベート健康保険のメリット・デメリット見ていきましょう。
法定健康保険のメリット・デメリット
基本的に保険料は収入により決められます(2015年10月時点では、総所得の14.6 %)。被雇用者の場合はそのうち約半分を雇用者が支払います。
メリット
- 最低限のレベルは確実に保険がきく
- 失業や慢性の病気、経済的な窮乏時でも保険の適用範囲は変わらない
- 扶養家族(収入のない配偶者、子供)の保険料は無料
- 年金受給時の保険料は上がることはない
- 他の法定の健康保険に変更しやすい(ただし、18ヶ月は同じ健康保険組合に拘束される)
- 支出の上限が定められている(医薬品、入院料など)
デメリット
- 必要最低限の治療にしか保険が効かない(ただし、追加料金を支払うことにより、適用範囲を広げることも可能)
- 日割り入院料金(28日間分まで)や多くの医薬品などの支払いが必要
- 自営業や高収入の場合、保険料が高額になる
プライベート健康保険のメリット・デメリット
保険料はリスクによって決定されます。例えば、自動車の任意保険の場合、免許取りたてのティーンエイジャーは保険料が高くなりますよね。また、事故を起こすと翌年に保険料が上がったりします。それに似ています。ただし、各保険会社や保険契約によって計算が異なるので、料金が変わってきます。
メリット
- 一般的に保険の適用範囲が広い
- それぞれの状況に応じて、適用範囲の異なる契約を選ぶことができる
- 法定健康保険と比較して、保険料が安くなるケースが多い(自営業など)
- その年に病院に行かなかった場合、保険料が一部返却される
- 保険の解約自体は簡単
- 病院の予約が取りやすい
デメリット
- 重い病気にかかった場合に、翌年から保険料が上がる可能性がある
- 年金受給者は料金が上がる(年齢により病気のリスクが上がるため)
- 扶養家族の保険料は別に支払う必要がある
- 法定健康保険へ戻すことは非常に困難
- 他のプライベート保険へ変更する場合、それまでに支払われた保険料は次の保険会社に引き継がれるが、変更に際し困難があるケースも多い
法定かプライベートかを決める
先ほども書きましたが、一度プライベート健康保険に加入すると、再び法定健康保険には戻せないので、よく分からなかったら、まずは法定健康保険を選んでしまうというのが良いでしょう。
法定健康保険では、収入に応じて保険料が高くなっていきます。特に、自営業で法定健康保険に加入していると、最低でも月に300ユーロぐらいの保険料がかかってきます。高収入で保険料が高すぎると感じる場合、更なるサービスを受けたい場合などは、プライベート保険への変更を検討すると良いでしょう。
ただし、扶養家族(子供・奥さんなど)が居る場合、もしくは扶養家族ができるかもしれない場合は、闇雲にプライベート保険を選ばないことも大事です。法定健康保険では無料で家族を健康保険に加入させることが可能ですが、プライベート健康保険では更なる保険料がかかります。
保険加入時は独り身でも、いずれ結婚して子供ができるという可能性はありますよね?後で「プライベート保険の方が高くついた」と気づいても遅いのです。
健康保険会社を選ぶ
大まかに法定かプライベートかを決めたら、良さそうな会社を探します。
身の回りの人にどの会社が良いか尋ねるのも手です。特にドイツ人なら、保険に詳しい人が多いでしょう。
また、Stiftung Warentestなどの雑誌では、定期的に健康保険組合の比較・評価がされています。表になっているので、ドイツ語がそれ程分からなくても理解できるのではないでしょうか。
[blogcard url=”http://www.test.de/versicherungen/krankenversicherungen/”][/blogcard]今回もインターネット上で、健康保険について日本語の情報を探してみましたが、なかなか正しい情報はありませんでした。最新の正しい情報を得るには、まだドイツ語で情報を集めることが必須のようです。
イザという時に大事な健康保険。ぜひ、納得できる良い会社を選んでくださいね!
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