ドイツの冬は、家の中に居る限りはかなり快適です。冬は、日本の家より暖かいと思います。
これは建物の断熱性・気密性が高く、暖房(Heizung)が効率的だからなのですよ!お陰で、外はマイナス10度でも、家の中は20度を保つことが可能です。
しかし、ドイツの暖房は日本では見かけないものですし、初めは使い方が分からないかもしれません。そもそも、高断熱・高気密の石造りの家では、暖房に対する考え方が日本とは全く違います。
今回は、ドイツでよく見かける、温水暖房の効率的な使い方、注意することなどを書いてみます。
温水暖房とは
写真は、お湯が中を循環している温水暖房です。ドイツの場合は、床暖房も同じようにお湯が循環するタイプがほとんどです。
熱源は、家の中にあるボイラーだったり、建物ごとのセントラルヒーティングだったり、地域熱供給(Fernwärme)だったりします。
この暖房は、窓の下に設置されていることが多いです。窓は最新の断熱窓だったとしても、部屋の中で一番熱を逃がしやすい場所です。つまり、窓際は温度が低いのです。その下に暖房が設置してあると、温度差が自然の対流を促し、部屋全体を暖めることができるのです。
この温水暖房の効果は穏やかで、音はほとんどしません。エアコンの様に送風の音がするわけでもなく、存在を忘れてしまうほど静かです。(もし暖房から大きな音がするならば、空気が中に入り込んでいます。暖房効率が悪くなるので、空気を抜くことが必要です。)
サーモスタットバルブ
最近の温水暖房には、サーモスタットバルブ(Thermostatventil)がついています。
サーモスタットバルブとは、設定した温度以下になるとバルブが開き、設定した温度以上になるとバルブが閉じるものです。これをきちんと使うことで、エネルギーを節約することができます。
握り部分のスリット状の穴は、空気が入り込むためのものです。ノブを一番絞った状態で、雪の結晶マークのようなものがついていることがあります。このマークに合わせると、部屋の温度は6度以上を保ちます。
サーモスタットバルブは、水道の蛇口とは仕組みが違います。温度調整のノブを一杯に開けたからといって、部屋が速く暖まるわけではありません。めいいっぱい開けると望む温度よりも高くなってしまい、エネルギーの無駄遣いになってしまいます。
古いものはこんな見た目をしています。これなら『水道の蛇口』タイプです。こういうノブの場合は、水道の蛇口と同じように、大きく開けたらその分、お湯が多く流れると考えて大丈夫ですが、無駄が多いので、できることならサーモスタットバルブに交換しましょう。
高断熱・高気密は『熱しにくく、冷めにくい』
先ほども書きましたが、ドイツの建物は高断熱・高気密です。
建物は、30cmぐらいの厚さの石壁に、さらに断熱材が使われていることが多いですね。断熱は外断熱と内断熱があるのですが、外断熱が好まれます。文化財保護などで建物の外観を変えられない場合には、内断熱が使われます。
外断熱の例ですが、こんなイメージです。テキトーな図でごめんなさい。
左側が屋外、右側が室内、灰色部分が石壁、黄色が断熱材です。それに温度のグラフを重ねています。(温度分布は実際のものとは異なるとは思いますが、イメージはつかめると思います。)
『断熱材』は、温度が遮断されている『ゼロ地帯』のようなイメージを持つ人も多いかもしれません。でも実際は、上の図のように、外側は外気、内側は石壁と接する面の温度を持っていて、中は図のような温度になっています。ただ、温度の勾配が急なだけです。
同じように石壁も、勾配は緩やかですが、外側が冷たく室内側が暖かい温度分布をしています。
ここで何が言いたいかというと、
『石壁は室温に近い温度を持っている』
という事です。
例えば、この部屋で5分ぐらい、外の空気を入れて換気をしたとしましょう。外は氷点下でも、換気の後に窓を閉めたら、部屋はそれほど寒くなったとは感じないはずです。
ところが、同じ部屋で暖房を何日もつけていなくて、室温が10度ぐらいになったとします。これを温水暖房をつけて、暖めようとします。ガンガン暖めているつもりでも、部屋はなかなか暖かくなりません。下手をすれば2日以上、寒いままです。
これは、壁の温度が10度以下になってしまっているのが原因です。空気を暖めても、冷たい壁が熱を奪ってしまって、部屋の温度が上がらないのです。
こんな風に、高断熱・高気密の家は『熱しにくく、冷めにくい家』なのです。日本の家とはだいぶ違いますよね。
温水暖房の経済的でエコな使い方
さて、以上のことを頭に置いて、ようやく本題に入ります!
温水暖房の基本的な使い方と、暖房費を節約するための方法を紹介します。年々、光熱費は上がってきていますし、できるだけ無駄は抑えたいところです。
室温をきちんとコントロールする
冬の室温は20度ぐらいが最適と言われています。25度にまでする必要はないでしょう。温度1度下げると、6%のエネルギーを節約することができるそうですよ。
また、寝室は17度ぐらいが適温だそうです。他の部屋も、夜は暖房の温度を下げるようにすると、エネルギー節約の効果があります。
ただし、使っていない部屋や、旅行時で長期不在でも、室温が15度以下にはならないようにすることが大事です。再び暖めるのが大変になる他、湿気を集め、カビが生える原因となります。さらに、氷点下にすると、水道管が破裂して、大事になるので気をつけましょう。
換気はこまめに
高気密の家では、意識して換気をしないと空気が入れ替わりません。こまめに数分間、しっかり窓を開けて換気をしましょう。窓を長時間、細く開けたままにしていても、壁が冷たくなるだけで、空気は入れ替わらず逆効果です。
換気をすることで、カビの原因となる湿気を追い出すことができます。
夜はカーテンを閉める
新しい断熱窓であっても、窓は熱の逃げやすい場所です。カーテンやブラインドを閉め、冷気が入り込まないようにしましょう。ただし、カーテンは暖房の上にかからないようにします。
窓やドアの気密性を上げる
窓やドアの気密性はとても大事です。窓枠にはプラスチックやゴム製のテープが貼ってあるのですが、年数が経つと劣化します。隙間風が入る場合は、このテープを張り直すと良いでしょう。テープを張る事は、賃貸でも許可されています。
Altbauの古い窓の場合は、2重窓効果にする透明シートがあるので、それを使うと良いでしょう。このシートを窓枠に貼りつけてドライヤーで温めると、ピンと張って、見た目は普通の窓とほとんど変わらなくなります。
暖房の裏側の断熱
暖房の後ろ側は、屋外に熱が逃げやすい場所です。暖房の後ろの壁に反射板をつけて、断熱をすると効果があるそうです。下は、発泡スチロールのシートにアルミ箔がついているようなものです。ただし、カビの発生を避けるため、裏側はしっかりと接着するべきなのだそうです。
まとめ
長くなったので、まとめてみます。
- 温水暖房とは温かい水が流れる暖房である → サーモスタットバルブは室温のコントロールをする
- 高断熱・高気密は『熱しにくく、冷めにくい』ので、冷やし過ぎないように注意する
- 温水暖房の経済的でエコな使い方
- 室温をきちんとコントロールする
- 換気はこまめに、しっかりとする
- 夜はカーテンを閉めて保温する
- テープを張り変えて、窓やドアの気密性を上げる
- 暖房の裏側の断熱も効果がある
以上でした!
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